君影草~夜香花閑話~
「はい。洗えたよ」

 にこ、と笑い、再び籠を抱えて厨に歩き出す。
 何ともいい加減で乱暴な洗い方だ。
 が、ぷ、と吹き出すと、あきも捨吉の後を追った。

「今日の夕餉は何にするの? そういや、頭領が作ってくれた干し肉、そろそろ下ろしておこうか。干し肉は保存食だし」

 そう言いつつ、芋の籠を置くと、捨吉はあきでは届かないところに吊るしてある干し肉を回収していった。
 捨吉はいつも、さりげなく手伝いをしてくれる。

「ありがとう。捨吉さんは、何が食べたい?」

 捨吉の優しさに感謝しつつ、あきは努めてさりげなく言った。
 ん? と捨吉が振り返る。

「限られた食材しかないから、希望のものは出来ないかもしれないけど。何か食べたいものがあったら、それにするわ」

「え……とぉ、そうだなぁ」

 ちょっと照れたように言う捨吉に、あきも少し頬を染めた。
 あきはこの里に来てから、捨吉を意識し始めていた。

 元々歳も近いし、話す機会も結構あったのだが、さほど仲良し、というわけでもなかった。
 それが戦で親を亡くしたあきを、捨吉が何くれと気遣ってくれたことで、ぐっと距離が近くなったのだ。
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