君影草~夜香花閑話~
 ただあきにしてみれば、捨吉は年少の者たちの取りまとめ役的存在だったため、その延長で自分のことも面倒を見てくれているのかもしれない、という思いがある。

 それに、それでなくてもあきは恥ずかしがりやだ。
 千代のように、ぐいぐい迫ることなど出来ない。

「あ、前に作ってくれた味噌汁。あれ美味かったよ。具は……覚えてないけど、出汁が上手に取れてて美味しかった。味噌汁は付けてよね」

 基本的に何でも美味しくいただける者は、こういうとき困る。
 何でも美味しいため、これ、というものが出てこない。

 それに、今はまだ畑も作り始めたばかりだし、季節も冬だ。
 食べたい物の材料が手に入るとも限らない。

 当たり障りなく、だが正直に、捨吉は答えた。
 あきの作る味噌汁が美味しいのは本当だからだ。

「えへ、そう? 下味の付け方は、ちょっと自信あるんだ。じゃ、お味噌汁は欠かさないようにするね」

「うん。後は頭領が、何を仕留めて来てくれるかだしな。俺も頭領を迎えに行きがてら、何か仕留めてこようかな」

 そう言って、小さな弓を持つ捨吉に、あきは、は、と気付いて彼の腕を掴んだ。

「あ、い、今頭領のところに行くのはどうかな。あの、頭領が狩りに行こうとしてたら、千代姐さんが来て。頭領は相手にしてなかったけど、千代姐さん、頭領の後追っていったから」
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