ダイヤモンドの未来
香江がこの部屋に来るのは三度目。

先々週の金曜日、俺は当直で病棟にいた。

薬剤師としての香江に聞きたいことがあった。もう、定時は過ぎているが、この時間は病棟にいることが多い。そう思いながら、ナースステーションに入ると、そこにいたのは薬局長だった。

薬局長は、俺が研修医時代にこの病院にいたときに、整形担当の薬剤師として顔を合わせたのが最初。ちょうど一回り年上で、当時はまだ薬局長ではなかった。話しやすい雰囲気で、薬のことを色々教えてくれ、勤務終わりに飲みに行くこともあった。

薬局長、プライベートでは小林さんと呼んで、慕う俺。向こうも、院内では先生と呼んでくるが、プライベートでは、澤田と呼び捨てだ。

医者になった時点から年上のスタッフからも先生と呼ばれる居心地の悪さ。そんな中で、呼び捨てにしてくれる他職種の存在は貴重だ。
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