エターナル・フロンティア~後編~

 しかし、それで本当にいいのか。ユアンが実権を握っても、状況がいい方向に向かう保障はない。それどころか状況が悪化するのではないかとソラは恐れるが、性格面を考慮すれば彼は常識人といっていい。

 ユアンは正しい意味で物事を把握し、様々な面で知識が豊富で無知と呼ばれる者ではない。また彼等のように力を持つ者の内情と置かれている立場を深く理解し、時に相談に乗り体調の管理もしてくれる。いい面を上げればそのようなものだが、悪い面も多いのが難点だ。

 ソラは外套に包まれ膝の上で丸くなっているリオルの身体を撫でつつ、これから自身の身に起こる出来事に付いて沈黙の中で整理していく。一方、主人の心情に気付いていないリオルは撫でられていることが心地いいのか、甲高い声音で鳴き鼻をヒクヒクとさせ時折くしゃみをする。

 車が、信号に引っ掛かり停車する。それと同時にユアンは珍しく間の抜けた声音を発し、同乗者を驚かせる。聞き慣れない声音にソラはユアンに視線を向けると、トラブルが発生したのか尋ねる。

「いや、その犬の餌に付いてだ」

「それでしたら、家にあるもので間に合わせます。リオルは子犬ですが、食べ物を軟らかくすれば……」

「ペットの場合、我々が食べている物を与えてはいけない。特に、タマネギなどネギ系は中毒を起こす」

「詳しいですね」

「以前、付き合っていた女性が犬を……別に、どうでもいいことだ。君には関係はない話だ」

「いえ、貴方のプライベートに立ち入ることはいたしません。聞いても、いいことはありませんので……」

 言葉ではそのように返すが、ソラはユアンのプライベートをどうでもいいと考えていた。また噂で囁かれる派手な女性関係を聞いても気分がいいものではないので、ソラはユアンに向けていた視線を逸らすと適当な言葉を言い、器用に話を別の話題へとすり替えてしまう。

 余程自分の恋愛遍歴の自慢したかったのか、ソラが話しに乗ってくれないことにユアンはフンっと鼻を鳴らす。だが、どのような態度を見せようがソラは彼のプライベートに立ち入ることはしない。それどころかネギ系以外に注意した方がいい物を聞くが、ユアンの反応は素っ気ない。

 自分の地位に自信を持ち、真面目に仕事をこなす。それでいて他者を見下し何の躊躇いもなく気に入らない者の命を奪う悪魔のような一面を持つユアンであったが、このように子供っぽい一面を持っていることを知ったソラは、相手の弱みとなる部分を掴んだと口許を緩め心の中で笑う。
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