エターナル・フロンティア~後編~

 それにソラの隣でオドオドしているイリアの姿を見ていると、下手な質問は彼女の羞恥心を刺激してしまう。やっと結ばれることができた、初々しいカップル。二人が互いをどのように見てどのように思っていたのかユアンは知っていたので、素直に祝福することができる。

 口許が緩んでいるユアンの姿に、ソラは全てを見抜いていることに気付く。そもそもユアンにいい訳が通じるわけがないが、だからといって何があったのか素直に話すわけにもいかない。唯一の利点は、口が堅く誰かに言いふらさないということだろう、カディオなら危なかった。

 絶対に、離すな。

 ユアンがソラの横を通り過ぎる瞬間、そのように言葉を残す。紆余曲折を経て、結ばれた同士。ちょっとやそっとのことで別れてはいけないと、ソラに釘を刺す。予想外のユアンの言葉に唖然となってしまうが、勿論彼に言われるまでもなくイリアを離すことはしない。

 ソラからの返事に、ユアンは満足そうに頷き返す。そして、一言「支払いに行ってくる」と言い残し、フロントへ向かう。このホテルの支払いはユアンが行うと事前に約束していたが、値段が値段の為にソラもイリアも心苦しい。だからといって、支払いができるほど二人に余裕があるわけでもない。

 ソラがユアンの視線を合わせながら支払いを待っていると、イリアが声を掛けてくる。彼女もユアンの態度から彼が気付いていることを見抜いたのか、微かに頬を赤らめながら恥ずかしいと話す。それに対しソラも同等の気持ちを持っていることを告げると、苦笑する。

「……凄いよ」

「ラドック博士?」

「そう、隠し事はできない」

「頭が良くて、勘が良くて……」

「完璧だね」

「真似できない」

「イリアが、真似しなくていいよ。あの人は特別で……凡人が、近づけるものじゃない。天才だよ」

「ソラも、そう思う?」

「研究所にいる時、他の者と違うオーラを放っていた。俺達が使用する薬も、作成している」

 天才だからこそ、理解できない部分も多い。また、感情面もわかり難い。科学者として非情に振る舞い、能力者を道具のように扱う。しかし時に、このように優しい一面を見せる。彼は、悪魔なのか天使なのか――両極端すぎるユアンの感情に、ソラの身体が身震いした。
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