天才に恋をした
「じゃあ…なんで子供なんか作るの?」

「…性暴力被害。知識に乏しい若年層の妊娠」

苗が言った。

親父がうなずいた。

「そういう可能性もある。真咲や苗ちゃんより歳下…って可能性もある」


俺らより…下?

想像がつかない。



「姉ちゃんが決めたの?」

「夫婦で決めたんだ」


何を言っていいか分からない。

反対とかじゃなくて、想像がつかない。



あ…母ちゃんが泣いてる。



「利道さんがね…」

利道さんは、姉の旦那さんだ。

「『陽子が本当に幸せそうで』って…」


親父が母ちゃんの背をなでた。


「『ずっとそんな顔見てなかったから』って『させてあげられなかったから』って…」



そうか。

それが利道さんの幸せなんだ。



姉ちゃんの幸せが、

利道さんの幸せなんだ。


それが母ちゃんには嬉しいんだ。



分かる。

なぜか俺には、

分かるんだ。
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