天才に恋をした

19-3

春と一緒に、赤ん坊がやってきた。



『陽人』って書いて「はると」

男の子だ。



母ちゃんが驚いたように言う。

「ミルク、けっこう飲むよねー!」

「すっごく力が強いの~。向こうの義母さんの指を離さないんだもん」



血がつながってないとか、関係ねーなぁ。

みんな陽人に夢中だ。

苗も陽人が来ると、自分の部屋から飛び出してくる。

俺だって、ゲップさせるの超うまい。


母ちゃんが陽人を寝かせて言った。

「私たち買い物してくるから、陽くん見てて」

「いいよ」



ベビーベッドに、苗がへばりついている。


「そのベッド、俺も使ってたんだよ」

「真咲くんが、赤ちゃんー?」

「そうだよ?」



うふふ…と苗が笑う。

何が、うふふだ。



「俺だって赤ん坊の時はあるだろーがっ」


また苗が、うふふと笑った。



「ったく…」


その時、リビングのドアが開いた。
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