天才に恋をした
ゲキジョウに駆られて

21-1

「わっ…」

苗が妙な声を上げた。

今、帰ってきたらしい。


手からバラバラと、新品の参考書が落ちる。


俺はグラスを持って、脇をすり抜けた。


頭が逆に冴えてきた。

これから、どうするか考えよう。



陸玖とのこと、

苗のこと…




ノックの音がした。

俺は目をつぶった。


またノックの音がした。


「真咲くん」


無視。


「真咲くーん」


無視無視。


「真咲くん真咲くん真咲くん真咲くん真咲くん真咲くん」


無視無視無視無視無視無視無視…




「アルコールは…」



無視。




「アルコールは青少年の健全な発育を阻害します」



アイスティだし…




「アルコールは血中で猛毒となって身体を駆け巡り、胃や肝臓に重い負担を…」


知ってる。




「さらに依存化により、身体を壊し、仕事を失い、家庭環境が崩壊し、ついには自分の人生をも…」


いつまで続ける気だ…

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