天才に恋をした
俺はドアを開けた。

苗が勢いで、つんのめるように部屋に転がり込んだ。


「お前、ウルサい」


にらむ俺にも、ひるまない。



「お酒飲まないで」

「飲まないって言ったら、出て行く?」

「うん」

「じゃあ、飲む」

「飲まないでー!」




俺の告白に気づくような苗じゃない。

また、苛立ちが戻ってきた。




苗がグラスに手をかける。

俺はすぐにグラスを取り上げ、背中に隠した。

苗が取り返そうとする。




「だめ!もう飲まないでー!」



グラスを頭の上に掲げた。

苗が俺の体にしがみついて、手を伸ばす。


体にしびれが走る。



「苗…」

「貸してー!」

「苗!」




苗は俺の変化に気づかない。



「もう飲まないでっ!」




グラスを高い棚の上に置いた。

そして苗のメガネを外した。





「お前、酔った男の部屋に入って来るって、どういうことか分かる?」





苗は…分かるわけない。

戸惑ったように、俺を見上げている。




「教えてやる」
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