天才に恋をした
アトモドリは出来ない

22-1

顔を洗って、水を飲んだ。


母ちゃんが帰ってきた。

俺を見て驚く。


「ええ!?何?早くなあい?」

「陸玖に帰された」

「ケンカしたのお?」

「他校の学生とケンカして、帰された」

「ケガはあ?」

「口げんかだよ」



母ちゃんは呆れたように俺を見た。



「そんなこと、お兄ちゃん達の時代にもなかったのに」

「ハラへった。早くメシ作って」



なんの後ろめたさもない。

俺は苗が好きなんだ。

認めてしまえば、こんなに自然なことはない。



人を好きになるって、もっとワクワクするもんだと思ってた。

毎日がバラ色…みたいな。



実際はぜんぜん違った。

沼地に入ったみたいだ。

泥に足を取られて、進めなくて、でも後戻りもできない。
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