天才に恋をした

23-2

謹慎最後の日は、日曜日だった。

自主トレから帰ってシャワーを浴び終わると、何やら騒がしい。

リビングのドアを開けると、チワワが二匹飛び出してきた。


「お邪魔してまーす」


姉貴が出迎える。



「おお。陽人は?」

「今、起きてるよ」



苗が陽人を抱いていた。


「母ちゃん、美容院だろ?」

「うん、さっき会った」



親父は、日曜出勤だ。

来てるって知ったら、悔しがるだろうな。



「はる~」

ミルクの匂いがする。


迷惑そうな顔してるな。

母親じゃないって、分かってるんだ。



「俺にも抱っこさせて」



苗が戸惑う。

首が座ってないから、怖いらしい。

姉貴が助けを出す。



「こうやって、手で支えて…そうそう」


陽人が泣き出した。



「ダメか」



あやしても泣き止まない。

姉貴にパス。



「ママは良くてもパパじゃダメなのね~」



姉貴が言った。



…ママとパパ?


姉貴も気づいた。

「アレ…?何言ってるんだろう。まだ違うよね…」


…まだ。


「あ!『まだ』じゃないや。何だろ。何言ってるんだろうワタシ?」

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