天才に恋をした
バカの正体

4-1

「はい。じゃあ、こっちやって」

乃愛が言う。

苗は大人しく、ペンを動かしている。



妹に教えてるというのは、嘘じゃないと思う。

すごく自然だし、教え慣れてる感じがする。




同じ女で、どうして違うんだろうな。

乃愛はただ制服を着ているだけなのに、女らしさが漂いまくってる。

苗は「オトコではない」

それだけ。




飲み物を取りに一階へ降りると、飛び跳ねるように親父が帰ってきた。

「ただいま~。苗ちゃんは?」


例によって、ケーキをぶら下げている。

最近、また遅かったのに久しぶりに早い。



「勉強してるよ」

「また~?勉強なんてしなくていいよ。頭いいんだから」

「馬鹿だから勉強してんだろ」

「天才の娘は天才に決まってるでしょうが」



親父はジャケットを放り投げ、ソファーにドッカリ座った。




「ねぇねぇねぇ。苗ちゃん、呼んできて」

「だから、勉強してるんだって」

「休憩休憩!」

「今、うちのクラスの女子が教えに来てるんだよ」


父親が目を見開いた。

「おお~。ケーキ!ケーキ食べればいいよ!」



親父が帰ってくると、とたんにウルサくなるんだよな。

しぶしぶ、苗の部屋のドアをノックする。

「はーい」

返事したのは、乃愛だ。



「親父が休憩してケーキ食えって」

「わあ!お父さん?うれしい!会いたかったのぉ」


そんな会いたくなるようなビジュアルじゃねーけど…。
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