天才に恋をした
サケラレナイ現実

25-1

イスや人をかき分け、苗の場所まで進んだ。


「苗っ!」


苗は気がつかない。

陸玖が先に気づいて、こちらに向かって手を上げた。



陸玖が立ち上がった。

「家で何かあった?」

「来るな!」


苗の腕をつかんだ。

引きずるように、会場から外へ出した。


苗を連れて、庭園に出た。

暗い。

ホテルの明るさに目が慣れてたから。

大きな木の影に入って、ようやく腕を離した。


「お前、留学するって本当?」



苗の表情は見えない。

顔に触れた。

うなずくのが分かった。


息が止まる。
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