天才に恋をした
「嘘だろ…お前、四年も行くつもりか…?」


苗が顔を上げた。

また言葉を探している。


「何!?頼むから何か言えよ!」


「修士と博士課程…」



大学院…!


「それって…」



聞くのが恐い。

全身の血が逆流してる。



「何年…?」

「七年くらい」



ヤバい…

あり得ねぇ。

腰が抜けた。


木の幹に手をついた。

こんなに近くに、この腕の中に苗がいるのに、遠ざかってゆく。



「お前、マジで言ってんの…?」



どうして…

苗の肩をつかんだ。



「うちの附属じゃダメなのか?」


苗の言葉を探すような息づかいが聞こえた。

でも黙ったままだ。


「何でダメなんだよ!?」


ようやく苗が口を開いた。

「そこがいいの」

「うちの親は知ってんの!?」

「知ってる」



知って…る?

ウソだ…



「いつから?」

「元から」

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