天才に恋をした

25-3

「戻れよ」

俺は手を離した。

「早く」



苗が、体を揺らした。

「真咲くんは?」

「いいから、行けよ」


明るい場所に戻りたくない。


「陸玖が心配するだろ」

「りっくん?」

「お前、陸玖には留学のこと言ったのか?」


苗は首を横に振った。


「可哀相だろ。友達なのに。言ってやれよ」

「友達…?」

「陸玖は、お前の友達」

「分かった」


苗が去っていった。



終わった。


何もかも。
< 141 / 276 >

この作品をシェア

pagetop