天才に恋をした
ホテルの敷地を出た。
波の音がうるさい。
人影も車もない通りを歩き続けた。
広い道だった。
見なれない四角い家が並んでいる。
世界は広い。
その世界を苗は、ずっと見てきたんだ。
俺とは違うものを見続けてきたんだ。
ポケットから、携帯を出した。
親父に電話を掛けた。
長いコール音が流れて、親父が出た。
「どうした?」
「聞きたいことがあるんだけど」
「…なに?」
「苗のこと」
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