天才に恋をした
ヘイワということ

27-1

予備室は畳部屋だった。

角田と特に何を話したわけじゃない。

苗のことも話さなかった。

ほとんど、サッカーのことばっかりで。



でも最後には言った。

「部活辞める」



角田はうなずいた。

「陸玖から聞いたよ」


俺は畳に寝転んだ。


「お前、気づいてた?」

角田は即答した。

「気づいてた」

「妹じゃないって?」

「あ、そうなんだ?それは知らなかった」



角田が麦茶を継ぎ足した。


「どこで分かった?」

「別に…どこでっていうんじゃないかな」

豆をポリポリ食べる音が聞こえた。


「キーパーやってると、ボールが全然違うとこにあっても、『あ!アイツに回しちゃダメだ!』って分かる瞬間があるんだよ。そういう感じ」


…分かるような、分からないような。



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