天才に恋をした
顔、痛ぇ…

目が開かない。


突然、ヒヤッとしたものが当てられた。

母ちゃんが、冷却剤を持ってきたらしい。


親父が怒鳴った。

「ほっとけ!そんな奴!人の信頼を裏切りやがって…」


声が怒りに震えている。


母ちゃんが、ため息をついた。

「ねぇねぇ。苗ちゃんは、真咲のことをどう思ってるの?」


親父が怒鳴った。

「おかしいよ!そんな事、聞く必要ある!?」


「とにかく、聞きたいの。苗ちゃん、どう思ってるの?」



苗は相変わらず、しゃくり上げたままだ。

母ちゃんが諭すように言った。



「世界に出たらね、聞かれたら直ぐに自分の意見を言わないといけないんだよ」


母ちゃんは、苗を椅子に座らせて、自分も向かい側に座った。

苗が俺をどう思ってるか、俺は分かってる。

それでも耳を澄ませた。


「好き」

と苗は言った。


心臓が跳ね上がった。



母ちゃんは冷静に質問を続けた。


「どこが好き?」


「優しい…」
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