天才に恋をした

31-2

親父に電話すると、もうスカイツリーまで到着していた。


「コイツ!何で出ないんだよ!早く電話してこいよ!」


車に乗り込むと、俺は母ちゃんと交代で助手席に座らされた。

車が動き出し、苗はすぐに眠り始めた。



大騒ぎする親父に、母ちゃんが口に指を当て「しっ」と言う。

ムッと黙り込んだ親父に言った。


「苗と二人で話したい」


親父は何も言わない。


「二人で、話し合いたい」



ようやく親父が口を開いた。

「…明日から振替で休みだろ?ヒロさんと蓼科行ってこいよ」




そして、大きな溜め息をついた。


「妹がいたなんて…もう俺、天才にはついて行かれないよ…」
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