天才に恋をした
俺もウトウトし始めたころ、ようやく家に着いた。


「苗ちゃん、着いたよ」


母ちゃんが苗を起こす。



俺は先に家に入って、薬の入っている引き出しを開けた。


「あ、帰ってきた~」

姉貴が二階から降りてきた。


「えっ!怪我したの?」

「違う。虫さされ」

「え?どこどこ?」

「俺じゃなくて、苗だよ」

「はー…」

姉貴は、間の抜けた声を出した。



母ちゃんに連れられ、ふらふらと苗が入ってきた。



姉貴は気の毒そうに眉を寄せた。

「あらぁ…本当にたくさん刺されちゃったねぇ」


俺から薬を受け取って、苗の手足に塗ってやる。



苗が寝ぼけ眼のまま、言った。

「ただいまー…」



姉貴が吹き出す。

「お帰り」
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