天才に恋をした

31-3

苗を寝かしつけると、時計は2時半になっていた。

授乳を終えた姉貴も加わり、家族四人がリビングでぐったりと座りこんだ。


「俺が間違ってたな…」

親父がポツリと言った。



「考えが甘かった。子供一人預かるって大変なことだ」

「…私は苗ちゃんにママにしてもらったの」


突然、姉貴が言い出した。

みんなが、顔を上げた。



「私は…三回も…子供を生きて産んであげられなくて…」


姉貴は続けた。


「自分が子供を死なせるだけの人間だと思うと…怖かった。子供が欲しいって以上に、怖かったの。だけど、苗ちゃんの部屋にある言葉を見た時に…」

姉貴は涙をこらえてた。



「私の子は、もうこの世にいる。私の事を待ってるって」




何かを飲み込むように、言葉を詰まらせた。




正月…

そうだった。

そんな事があったっけ。



「間違ってたなんて、言わないで」

< 178 / 276 >

この作品をシェア

pagetop