天才に恋をした

32-2

翌朝…


「もっと腰を落とす!」



ゴロン…



テラスの床に、苗が転がった。


「腹圧!腹圧を忘れない!」


苗が情けない顔で俺を見上げる。



「こうだって!こう!」

「腰が…」

「腹圧をしっかり掛けて、天に向かって垂直に…立つ!」


苗はヨロヨロと立ち上がり、ソロソロと腰を下げた。


「ほら腹圧っ!」



ステンッ


「お前、一回も出来ないのかよ!」

「お茶が入ったよ~」

母ちゃんが、テラスへ来た。



転がった苗を見下ろす。

「あ~あ、かわいそー」

「一回も出来ないなんて、信じらんねぇ」

「もっと簡単なのがあるんじゃないの?とにかく、お茶にしようよ」




苗はのっそり立ち上がると、恐る恐る俺の前を通り抜けた。

俺も部屋に入って、テーブルについた。




「スクワットなんて、基本中の基本なんだけどな」

「本人が必要と感じてないものをムリにやらせたって、体壊すだけだよ」

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