天才に恋をした
「必要なんだって!筋肉がないと、疲れやすいし、冷えるし、風邪引きやすいし…」
「真咲は苗ちゃんと話し合いに来たんでしょ?筋肉と対話してどーするワケ?」
「でも筋肉っていうのは『あった方がいい』んじゃなくて『なきゃいけない…」
「筋肉はもういいっ。この欲求不満っ」
「なっ…!なん」
「あんた、サッカー部戻ったら?」
欲求不満って、そっちか…
「急に辞めるなんて、りっくんが可哀想!」
「陸玖の心配かよ!」
「りっくんとの話し合いも必要だと思うけどな」
今更、話すことなんてねーし。
手でカップを揺らす。
今頃、みんな練習してんだろうな。
母ちゃんが立ち上がり、バッグを手に取った。
「私、友達と会ってくる。夕飯までには戻るから、ゆっくり話し合って」
じゃあね、と風のように去って行った。
残された俺たちの間に、たくさんの鳥の声が割り込んできた。