天才に恋をした
お父さんが、近くの街まで行くって言うから、付いて行ったの。

いつもは私だけ村に残るのに、その時はお父さんの本がたくさん届くから、私も荷物運びに付いて行ったの。



その日は街の知り合いの家に泊まって、明け方に騒がしいな…って思ってた。

その家の人が、お父さんを起こしに来たの。

それで、お父さんに何かを伝えた。

お父さんが顔が真っ白になって、息を「ひっ…」って。



その街の言葉が分からなかった。

村で何かあったのは分かったけど。



私は着替えて、出発を待った。

お父さんも青ざめたまま、着替え始めた。



家のご主人が騒いで、お父さんを止めてるみたいだった。

お父さんは「今は安全だ」という風なことを言ったの。

私は、村の途中にある橋でも落ちたのかなぁと思った。



奥さんも出て来て「娘さんは置いて行きなさい」って、お父さんに言ったみたいだった。

でもお父さんは、あんまり聞いてなくて、勝手に家から出て行っちゃったから、私も付いて行ったの。
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