天才に恋をした
乃愛は厄介だ。

俺は何度も「もう家には来なくていい」と伝えた。

でもその度に、

「私は大丈夫。ちゃんとした自分の意志で来てるから」

とか

「苗のことは、私が一番よく分かってると思う」

とか

「私がいないとダメ~あの子は。今日もね…」

とか言われて、いつの間にか元に戻っている。





親父もここ最近ずっと遅いし、肝心の姉貴は妙に忙しそうで、

誰もいない昼間来て、掃除して、作り置きの料理を置いていってくれるだけだし。


(もちろん、感謝してるけど)



乃愛は夕飯の材料を買ってきて料理も作るし、

うまいし、明るいし、かわいいし、

断る理由が見つからない。



ただ、このままじゃダメだってことには、さすがに気が付き始めた。




時計を見てみろよ。

「もう10時だぞ?」

9時過ぎから、俺は「もう帰れ」って言い続けてる。

だけど例によって

「大丈夫だよー。キリのいい所で終わらせるから」

と、サックって言われる。



苗もいつも通り、一心不乱に問題に向っている。

俺はしばらく見ていたが、やっぱり解いてない。

それを乃愛は分かってるはずだ。




「ねぇ。気が散る。出てって」

俺の家なのに、追い出されてドアを閉められた。

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