天才に恋をした
抵抗する苗の手を抑えた。


「お前にキスした日に、俺が言ったこと覚えてる?」

「…うん」

「言ってみて」

「『もうこんなことは二度としません!』」

「その後」

「覚えてるよ…」


苗がもぞもぞと体をよじる。




「なんて言ったか、言えよ」


苗は顔を真っ赤にして言った。


「『お前は俺のもの…』」

「それから?」

「『それを自覚するまで待つ』」

「それから?」

「覚えてるよ…」

「ごまかすな」


うつむく苗をソファーに押し付けた。


「返さなくてもいいから、受け止めろよ」


目を見つめた。


「俺は真剣に言ったんだよ」


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