天才に恋をした

37-2

「ふ、ふむ。俺としてはオスとメスにまつわる一般論をスポーツという観点から述べただけなんだが…」

「お前、スポーツなんかやったことねーだろ」

「なるほどです。もちろん経験は大事だと言われているが…」

「真咲くん」

「全ての物事を経験することなど人間には出来ないわけで…」




「真咲くん」

苗が教室を覗きこんでいた。



「何だよ」

「お父さん、もう来たって」

「マジ?」



三位男は、苗に言った。

「人が話している時は、邪魔をしないでくれ!ましてや下の階の人間が!」



この予備校では、上のクラスの人間が下のクラスに出向くことは、ほとんどない。


「上のクラスに友達がいるんだぜー」

と言いたい連中だけが、他の階に行く。



「ごめんなさい」

苗がしおれた顔で謝った。



「バカは気にするな。今、どこ?」

「ば…馬鹿だと?」

「もう来た」

「空港?家?」


三位がツカツカと歩み寄り、指を苗の鼻先に突き付けた。
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