天才に恋をした
ジネン親子
38-1
「羽田から直接、予備校へ迎えに行ったら、ま~た真咲が青春しててさ」
「それは、クラスメートも迷惑だね」
「サッカー部のノリをあそこに持ち込むのは、ムリがあるよな」
大人しい宮崎親子の代わりに、親父と母ちゃんがしゃべっている。
「初っぱなから醜態をお見せして…」
親父が宮崎先生にワインを継ぐ。
この人をどう呼べばいい?
ビミョーだ。
「乱暴な子じゃないんですけど、苗ちゃんのことになるとタガが外れるみたいで…」
宮崎先生は鷹揚にうなずいた。
「よくあることです」
「よ…よくありますか?」
「今の試験場にいる非常に無口な若者も、婚約者がからかわれたのに腹を立てて、相手の家の鶏を全て売り払ってしまいまして」
「鶏は貴重な財産でしょう?」
感慨深く、宮崎先生がうなずく。
「全て買い戻すのは大変でした」
「もしかして宮崎先生、お金出したんですか?」
「ええ、多少ですが融通しました」
親父と母ちゃんが目線を交わす。
多少なのかなって顔だ。