天才に恋をした

40-2

クリスマスの朝になっても苗は部屋から出てこなかった。

俺も勉強でアタマがいっぱいで、学校が休暇になってからは、苗を構っている余裕もなく、食事さえ用意しとけばいいだろうと思っていた。


だけど、作った食事が減ってない。

せっかく作ったのに、乾燥してるし。

花もしおれてるし。



「アイツ…ほんと、いい加減にしろよ!」


マジでアッタマきた!


足を踏み鳴らして、苗の部屋のドアを開けた。


「おいっ!!お前なぁ!…」



一瞬、床で寝てるのかと思った。

こんな所で……



違う!



慌てて、抱き起こした。


ゾッとした。

顔が真っ白だ。



「苗!…おい、ウソだろ!?」


呼吸を確かめる。


してる、と、思う。

首の脈に手をやった。

むちゃくちゃ弱い。



苗の頭にクッションを当てると、医療センターに電話をかけた。

すぐに来てくれるとのことだけど、この国では信用できない。



とりあえず、白湯を飲ませようとしたけど、グッタリしたまま喉を通らない。


…俺らは夫婦だ。

だから口移しでかまわない。


うん。


苗の口に、何度か水分を送り込む。


ベッドに連れていきたいけど、動かしていいのか分からない。

その前に着替えさせてやりたい。

トイレに行く途中で倒れたんだ……

一応、妻の名誉のためにその先は言わない。
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