天才に恋をした
人は見かけによらない。

春一の成績を聞いて驚いた。


「全部、A*かよ…」

「だって友達いないんだもーん。勉強するしかないっしょー」


数日前には金色だった髪が、今日はもう違う。


「なんだソノ色?」

「暦の上では春でしょ。ピンクにしようか迷ったんだけど、直前でソウダ!新緑だ!」

「ワケわかんねーよ。しかもロングスカートって何だよ」

「パンツより暖かいよ~。それに可愛くない?」

「…オマエ、そっちか」

「ヤれるとは思うけど、恋愛にはならないな~」


ビミョーな内容をあっさり話すヤツだ。



友達がいないと言いつつ、女の子を連れてきた。


「はじめまして。ツィ シュエです。お好み焼きを食べに来ました」


女の子というよりは、女性に見える。

賢そうな額を見せて、涼やかな目元をしている。


「シュエは、お父さんの仕事の関係で日本にいたんだよ」

「フツーに日本語、上手いもんな」

「五か国語、話せるって。でも真咲のツマもでしょ?」

「うちのは、アウトプットに問題がある」


苗はテーブルセッティングに集中している。


「エイトブリッジに天才がいるって聞いてたけど、ツマのことだったんだね」

「俺こそ、ユングラフトに天才がいるって何度も聞いたけど、春一のこと?」

「それ、たぶんシュエだね」


驚いて、シュエを見た。


「天才じゃないよー」

と、シュエが眉を寄せる。


「シュエは、クラスまで持ってるんだよ」

「え?教えてるってこと!?」

「たまたまです」


謙遜まで出来る。

本物だ。


世界は広いぜ……
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