天才に恋をした

7-3

家に帰って、階段を駆け上がった。

苗の部屋のドアを開ける。


さすがの苗も驚いたようにペンを止めた。

ベッドに寝っ転がっていた乃愛が、転げ落ちるように起き上がる。


「出て行け。今すぐ」


乃愛はあっけに取られたように、俺を見た。


「なに?どうしたの?」

「出て行け。俺が間違ってた。もう二度と来るな」



乃愛は、持っていた雑誌をさり気なく後ろに隠し、

「ねぇ。まず座りなよ」

と言って、ベッドの場所を開けた。



「急に、どうしちゃったぁ?周りの人に何か言われたの~?」

「何も言われてねーよ。俺が間違ってた」

「もしかして陸玖?」

乃愛は、軽く顎を上げ笑った。





「陸玖のことは、気にする必要ないと思う」


乃愛は一人でうなずきながら、ゆっくりと言った。


「私たちが、苗のことを一番大事に思ってるんだし、それが一番大切なことだと思うのね」

そう言いながら、苗に向かって微笑みかけた。


「思うな」

と俺は言った。



「なにを思うなっていうのよ~?」

「俺の家族のことを大事に思うな」



出た。

乃愛の妖怪顔。

頬が引きつり、目の色が不気味に変わる。
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