天才に恋をした

10-2

苗のノートを見た瞬間、分かった。

「お前、ちゃんと解いてんじゃん!」



思わず、苗の頭をなでた。

髪がサラサラしてる。

ここに来た時より、ずいぶん伸びたな。

苗はノートから頭を上げて、なでている俺の手に自分でアタマをなすりつけた。

「お前はネコか」



苗は何も答えず、また勉強に没頭し始めた。

オンナの頭って、小さいんだな。



俺は一階に降りた。

母ちゃんは、手紙を書いてた。



「もうすぐ陸玖が来るんだけど、なんか食いもんある?」

「え!お友だちって陸玖のこと!?」

「そうだよ」

「やっだ!早く言って!?化粧しなくちゃ!」

母ちゃんは手紙を放り出し、化粧室に向かった。



「食いもんは!?」

「Achetez s'il vous plaît un gâteau!」


…は?


書きかけの手紙を見ると、すべてフランス語で書かれている。

馬鹿じゃないはずなんだけどな…
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