天才に恋をした
「キスしていい?」

と聞いてみた。



沙織ちゃんが立ち止まった。

緊張して、固まっている。



周囲には誰もいない。


「あ…あの…今じゃなくても…」

「じゃあ、いつ?」


付き合って二週間。

もうキスくらいしても良くない?


「いつ…とかじゃなくて、雰囲気とか」



雰囲気って。

サッカーの練習やって、

デートプラン考えて、

連れまわして、

頃合いを見計らって…

すること一緒じゃん。



「今。したい」

「こ、心の準備がっ…で、できてないですっ」

「敬語禁止したよな?」

「ち、ちが…今のは焦ってっ…!」

俺は沙織ちゃんの頭を引き寄せた。



「俺のこと好き?」

「…好き」

「俺も」



沙織ちゃんが泣きそうな顔で俺を見上げる。


「イジワル」



だから?

キスもらった。
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