天才に恋をした

12-3

「考えてたのと違うの」

沙織がそう言い出したのは、夏休みが終わる頃だった。



何度もキスして、

『ちゃん付け』も止めて、

毎日電話して、

時間が合えばデートしてたのに、

突然これだよ。



「違うって何が?」




練習終わりに呼び出されて、まだシャワーも浴びてない。



「全然、幸せじゃない」

「その話、長くなる?シャワー浴びてきていい?」

「ホラそういうところ」



ため息しかない。



「意味わかんねーんだけど」

「自分の都合しか考えてない。私がどう思ってるとか、どうして欲しいとか、何も考えてないじゃない」


…意味不明。

相手は年下だ。

冷静になれ。



「今、疲れてるんだよ。落ち着いて話したいんだって」

「じゃあ、『その話長くなる?』なんて言い方しないで」


…っんどくせぇ。




「めんどくさいって思ったでしょ?」

「じゃあ、どうしろって言うんだよ?そもそも不満があるなら、その都度言えばいいじゃん」

「そんなこと態度で分からない!?」

「分かるわけないだろ。どの態度だよ?」
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