天才に恋をした
他の部のヤツらが見てる。

ラチがあかない。

無理やり話を打ち切るしかない。




「とにかく後でにしよう」

「『後で』なんてない」



沙織は小さなアゴを振りかざして宣言した。

「もうここで別れる」

「…おい」

「今分かった。真咲くんは私のこと好きじゃないって」

沙織は悲しそうに言った。

「真咲くんは自分しか好きじゃない。そんな人といても幸せになんかなれない」



俺は黙った。

それのどこが悪いのか。

みんな、自分が好きだろ。



沙織もため息をついた。

俺とは種類の違う、ため息だった。

「いつか真咲くんにも本当に好きな人ができるといいね」

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