天才に恋をした
廊下に出る。

苗の部屋から明かりがもれている。



アイツ…まさか。




ノックもせずにドアを開けた。

「やっぱりな」


苗はハッと、顔を上げた。



「寝てないのか」

「ね…ね…」

「寝てないよな」



机の上には、和訳したらしい文章があった。

苗が座っている椅子を苗ごと後ろへ引いた。


「あっ…」

苗を抱き上げて、ベッドに放り投げた。



「寝ろ」



苗が情けない顔で、見上げる。

メガネを外してやる。

口をとがらせて俺を見る。


「なんだよ?」

「…もうちょっと」

「『もうちょっと、もうちょっと』で、この時間だろ」



苗は目をつぶった。

でも不自然に力が入ってる。



「寝る気ないだろ」
< 67 / 276 >

この作品をシェア

pagetop