天才に恋をした
放課後の練習が終わると、いつも駅前にあるファミレスに直行する。

家に着くまで、飯を我慢するとかマジ無理。

だいたいは、乃愛たちも付いてきて、二時間くらいはダラダラする。



でもその日は、違った。




「真咲、行くよ~」

着替え終えた俺に、乃愛が当然のように声をかける。



「あ、俺は行かねーわ」

「え?なんで?」

「つーか、当分行かねー」


乃愛とその仲間たちの動きが止まる。


「え…?え?え?え?何で?」

「次は期末テストだろ」

「だから、ファミレスで…」

「違うって。教えるんだよ。『ウチの』に勉強を」



乃愛の顔つきが見る見るうちに変わった。


乃愛のマジになった時の顔、怖過ぎ。

普段明るいから、落差が怖ぇーわ。



「なにそれ?何で真咲が犠牲にならないといけないの?」

「アイツ、ヤバいんだよ。今まで、まともに学校行ってないんだから」

「俺が頼んだんだ」


陸玖がフォローする。


「うちのクラス、平均点がかなり低かったから、期末の点も悪かったら即補習って担任が…」

「担任は、苗に勉強教えろって言いたいんだろ?」

「だから何!?クラスの女子が教えたらいい事じゃない!?」

「お前、何を怒鳴ってんの?」

「どうして、そういう事があったって教えてくれなかったの!?」


は…?

また、そのセリフかよ。



普段は、本当に明るくて面白い奴なのに。

顔もスタイルもいいし、好かれてる事に悪い気しなかったのに。


「関係ねーだろ。マジ無理だわ。お前、マジ無理」


背を向けて歩き出した俺の後ろから、甲高い雄叫びような声が聞こえてきた。




なんだ、アイツ…



マジでドン引きした。

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