Sugar&Milk

その言葉に自然と朱里さんの顔が浮かんだ。
ああ……会いたい。

「ありがと相沢」

大事なことを自分で気づけないで相沢に言われるなんて、俺は本当に間抜けなやつだな。今まで朱里さんをちゃんと見てなかった。信じてなかった。

「逃げないでちゃんと話し合ってくる」

「うん。頑張れ」

相沢は微笑んだ。
春から寂しくなるな。相沢にはたくさん助けられた。

「じゃあねー、お疲れー」

いつもと何一つ変わらない態度で俺に別れを告げた。

「お疲れ」

「またね」

俺は相沢に「じゃあな」と手を上げて背を向けると、改札まで歩き出した。今夜の最終電車に乗るとスマートフォンで朱里さんにLINEを送る。

『ずっと連絡しないですみません。朱里さんの都合に合わせるので会いたいです』

勝手だと思われるだろう。呆れて怒っているかもしれない。もしかしたらもう返事をくれないと思ったけれど、すぐに既読になって返信が来た。

『連絡ありがとう。明日の夜ならあいてるよ。瑛太くんがバイトなら明後日でもいいから』

返信をくれたことに安心する。『連絡ありがとう』だなんて、朱里さんに言わせてしまった。本来なら俺が伝えるべき言葉なのに。

『明日の夜朱里さんの部屋に行き』

文章の途中で削除キーを連続でタップする。朱里さんの家に押しかけて傷つけたばかりなのに、また家に行ってもいいのだろうかと迷う。

『明日の夜、バイト終わったら朱里さんの家の近くで待ち合わせでもいいですか?』

こんな言い方じゃ変わらず距離を置こうとしていると思われるかもしれないけれど、これが考えられる精一杯だ。

『分かった。バイト終わって電車乗ったらまた連絡ください』

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