Sugar&Milk

「もう年内は何の予定もない。朱里さんは?」

「仕事」

そう言うと瑛太くんは私の腰から手をどけてベッドから降りる。

「じゃあ早く食べなきゃ。駅まで一緒に行こ」

今までならギリギリまでくっついてくるのに今日はあっさりしている。昨夜の私の態度がよっぽど堪えたのかもしれない。

「朱里さんってどんな仕事してるの?」

「え?」

「なんとなくは知ってるけど、ちゃんと聞いたことないかなって」

「うーん……企画が発表されるまでは言えないことも多いんだけど、今は再来年オープンのリゾート地のセレモニーを準備してる」

担当は山本だけど私もサブについて準備をしている。

「リゾートのオープン自体はマスコミでも発表されてるけど、どんな施設があるかとか、セレモニーに来る有名人とかはまだ公表できないんだ」

「へー、すごい」

メインの担当が山本であることが悔しい。同期なのにあいつの優秀さにはまだ追いつけない。

「でね、そのリゾートはホテルとか海が売りなだけじゃなくて美術館も大きな病院もあるの。マンションは既に販売が始まって完売してるところもあるみたい。住んでみたい環境だけど家賃とか高そうで……」

いつの間にか担当している仕事のことを熱を込めて語っている。自分の仕事が好きだからこそ止まらない。

「企画責任者は山本なんだけどね。山本は意外と慎重派だから私の案と全然重ならなくて毎日言い合いなんだ。同期だからお互い遠慮がなくて。まだ同じ同期の武藤くんの方が意見交換って感じがするんだけど」

「そっか……」

心なしか瑛太くんは元気のない声を出した。さすがに語りすぎてしまった。仕事バカだと思われたかもしれない。

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