Sugar&Milk

「あれ、橘帰るの?」

「うん、お先に。二人は?」

「僕たちはご飯行くの。橘さんも来る? それともデート?」

「デートじゃないよ。ただ帰るだけ」

「彼氏さっき店にいなかったけど、デートじゃないんだ?」

山本はまたカフェに行ったようだ。私が瑛太くんと付き合わなければ山本もこんなにカフェを意識することもなかったのに。

「向こうは実家に帰ってるの。山本は最近よくカフェに行くね。昨日もコーヒー買ってたよね?」

最近はテイクアウトの紙カップをよく手に持っている。

「優衣ちゃんに会うためにね」

「誰それ?」

「相沢優衣ちゃん。橘の彼氏を狙ってる子」

「何で下の名前まで知ってるの?」

「通い詰めて仲良くなって、教えてもらったの」

山本は得意げな表情になるけれど「あまりにしつこいから仕方なく教えてくれたんだよ」と武藤くんに突っ込まれる。

「マジでお前ばらすなよ」

山本の行動力には驚きを通り越して呆れる。相沢さんの下の名前は優衣というのか。

「デートじゃないなら橘も飯食おうぜ」

山本はコートを羽織りながらエレベーターのボタンを押す。

「まあいいか、たまには行こうかな」

同期でご飯に行くのも悪くない。エレベーターのドアが開き三人で乗り込んだ。

「山本はもしかして毎日カフェに行ってるの?」

「大体毎日かな。あの子がいないこともあるけど」

「山本くんは本当に本気なんだね」

武藤くんは静かに口を挟んだ。

「だから何度も言ってるけど本気だって。本気で優衣ちゃんと付き合いたいと思ってるよ」

「今までの山本くんを見てると意外で驚いてるよ。ああいう子はタイプじゃないと思ってた」

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