Sugar&Milk

「ああいう子って?」

私が聞くと武藤くんは「なんか気が強そう」と答える。それを聞いて武藤くんにまで愛想がないことがばれてるよ、と心の中で彼女に反撃してしまう。

「最初は俺も顔以外好みじゃないって思ってたけどね。だんだん良い子だって分かったから」

相沢さんが良い子?
疑問に思うのは相沢さんに失礼かもしれないけど、過去数回の私への態度を思うと山本が相沢さんを良い子と言うことに納得できない。

駅の建物の中に入ると自然と視線は改札前のカフェに移る。今日は瑛太くんがいないことは分かっていても店内を見てしまう癖は抜けない。そうして相沢さんがレジの前にいて接客中なのを見て慌てて視線を逸らす。瑛太くんを取られるかもしれない不安から、相沢さんに対して悪い思いしか持てないことが嫌だった。自分が心の狭い、汚い人間に思えて仕方がなかった。

山本のスマートフォンが鳴った。私たちはその場で立ち止まり山本の電話を待つことにする。すると応答した山本の顔はどんどん険しくなる。

「……ええ。今から伺います……失礼します」

通話を終えた山本は「悪い! 今から会社戻る」と私と武藤くんに謝る。

「ちょっとトラブルで。悪いけど飯は今度でいい?」

「いいよ。橘さんと行くから」

「そういえば武藤くんと二人でご飯行くの初めてかも」

武藤くんと顔を見合わせる。

「山本くんの愚痴でも言い合おうか」

「愚痴でも褒めでも何でもいいから、今日はごめん! またな!」

山本は早足で会社への道を戻っていった。私と武藤くんは何を食べようか相談しながら改札を抜けた。最後までカフェの中を見ないように意識しながら。



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