猫、いつとったら良いですか

サークルに入った猫



「これ!怜ちゃん。この人、超イケメンだと思わない?」

「あー思います。整った顔されてますね」

「でしょう?私、この人と結婚するの。うふふ」


先輩同僚の一人が男性の写真を見せて言った。

周りにいた同僚達も『かっこいい』『うらやましい』などと言っている。


どの口が言う。どの口が。この口か?

ちなみに、私は露ほどにもイケメンだとは思ってないけど。

先輩だから、話は合わせておかなければ。

でも、やはり嘘は苦手な猫なので、『整った顔』だと思ったのは間違いでないけれど。

いくつか支社があるにはあるが、どこにでもあるような普通の会社。それが私が勤める会社。


仕事もそんなに好きではないけれど、私には仕事よりも何よりも同僚との休憩十数分が度々嫌になる。


ちょっと休憩時間をオーバーして自分の机に戻るとすぐ課長に呼ばれた。


「大居さん、これやっといて」

「はい。ありがとうございます」


OL新人時代に『ありがとう』と言う重要性を誰かにしつこく説かれて、何を任されるにもゴミを渡されようが『ありがとう』と言ってしまう。私のくせ。

「なんで『ありがとうございます』なの?」

「説明してくれて、『ありがとう』です」

「そっか」

営業スマイルを貼り付けた私の笑顔を、笑われた気がした。








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