キミのその嘘つきな、
出来立てだからだろうか。温かい甘い餡は美味しくて癖になりそうだった。

「桔梗ちゃんがそう言うなら、どら焼きの次に看板になれるな。このモンブラン餅は」
「うん。期待しとくね」

にやりと笑って隙を見て更に餡を味見してみた。やっぱり栗の控え目な甘さが美味しい。

「ほら、どら焼き」
「ありがとー」

すぐにカバンから財布を取り出そうとしたが、幹太は低い声で「いらない」と言うと、どら焼きの入った紙袋をを渡してきた。

「……お祝いのつもり?」
返事はない、目も合わせない。
ただ黙ってレジを締め出す。そうやってわざと私を見ようとしないその仕草が嫌。
無理に冷静と取り繕って無表情に努めているのがバレバレなんだから。

「言葉はくれないの? 物で私を誤魔化す気?」

「……あいつが待ってんだろ? 行けよ」

レジを仕舞い終えたのか、私に背を向けてそう冷たく言う。

「そうやって、自分の意見は言葉で言わなくて、空気で読みとらせようとする、キミのその嘘つきなところ大嫌い。祝福できないぐらい私のこと嫌いならそう言いなさいよ。私たち、両思わないよ! 良かったわね」

内心、『両思わない』の意味が分からなかったが、私ももう引っ込みが付かなかった。
指輪が重く光るのを感じながらも、どら焼き代をレジに叩きつけるとおじさんに挨拶もせずに店を飛び出した。

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