て・そ・ら


 ―――――――――きゃあ。

 あたしは一瞬で、真っ赤になった。

 ど、どどどどどどどどう答えればいいの、それって!??

 痛くないやつ。痛くない、ハプニングキス。いやいやいや、ハプニングでなくて、それは・・・。

 言葉を出せない。だけど視線も外せない。だからあたしは、ただ黙って真っ赤になっていた。

 あたしと同じ赤い顔をして、横内は目をそらしている。

 ・・・うわあ、耳まで真っ赤だ。

 マフラーを巻いてないからジャージの襟のところまで肌を赤くしているのがはっきりと判る。それはやたらと鮮やかにあたしの目にうつった。

 緊張して固まったあたしの頭には、秋に描いた紅葉が浮かび上がる。

 赤く染まっている。本当に綺麗。あたしが描いた、あの紅葉みたいな紅の――――――――――

 真冬の昼間、綺麗な綺麗なクリアブルー。その眩しいまでの青空をバックにして、横内がゆっくりと振り返った。

 だからあたしは目を瞑る。今出来ることって、これだけだって思った。

 トクン、トクン、と体の真ん中で心臓が音を立てている。



 ふわりと空気が動いて、横内の顔が近づいてきた。






・「テ・ソ・ラ」終わり。
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