花と死(前編)
「裏切り者のキミが何でこんな平和な世界にいるのかなぁ〜?」
「貴様、タナトスの使いか。」
「へへっ、だって……裏切り者はだぁいっきらいだもん。」
狐月はヴォルフラムの首に手を伸ばす。
「フラン!」
クラウジアは駆け寄ろうとしたが、ヴォルフラムは動かない。
「俺を殺したい訳ではないだろう?」
自嘲気味に嗤う。
「!?」
クラウジアは駆け寄るのを止めて、その言葉の意味を考える。
そして、転生するたびに喪ってきたことを考えた。
「まさか、御前が愛した女は……」
この、“罪人”とかいう集団に殺されたのか。
そう問いかけると狐月は首を振った。
「ボク達は別につるんでるわけじゃない。……ただ、タナトスが怒ることに共感したからボクは手を貸したってわけ。」
クラウジアの予想を見透かしたように狐月は言った。
「許されない。永遠に、ね?」
狐月は目を細めた。
ヴォルフラムは何処か此処ではない場所を見ている。


——足元が溶け、骸と薄氷に覆われる。
これは、幻想の世界。
目の前には最初の自分、“サタン”
『貴様は戻りたいのか?』
問いが過る。
「貴様は戻りたいのか?」
やはり、同じ問いだ。
「あぁ。」
「ならば、構わない。だが、そうなれば永久に死なない。そして、誰も愛せない。」
「何故、そう言い切る。」
「世界の全てを識ることになるからだ。」
サタンは諦め切ったような色の目で見つめる。
「広い世界のひとつを慈しむこころが、俺にはない。」
「貴様は俺ではない。」
「だが、戻ることはそういうことだ。第一、俺が住む所は地獄界。此方には頻繁に行けない。」
そう言われてヴォルフラムはサタンを見た。
「ならば、連れてくればいい。そうすれば死もなく、ずっと、一緒だ。」
ぽつりと呟いた。
「……どうだかな。」
サタンはそう言うと悲しげに笑んだ。
そして、空間は元に戻る。


「——そう、サタンは評されてる、か。」
呟いて、進み出る。
「ははっ、随分と長い罰だ。神か悪魔か、興味も無いが……」
そのまま狐月の目の前に立って虚ろに前を見つめた。
口元はわらっている。
「…………好きにすればいい。」
「え?」
狐月は驚いた。
クラウジアは不安になって、ヴォルフラムの方に歩み寄る。
「は、ははは、ははっ……あはははははっ!!!!」
ヴォルフラムは高らかに笑ってクラウジアの方を振り返り、首を絞めた。
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