女子力高めなはずなのに
そんなことをぼんやり考えていたら、うつらうつらといつの間にか寝てしまったらしい。

目が覚めると額にタオルが置いてあった。手に取るとタオルはまだわずかに冷たい。

こんなことされたの、初めてだな。

……いや、違う。

そうじゃない……。されなかったんじゃなくて、させなかったんだ。

俺は今まで、人が近づくことを拒否していたんだ、きっと。

心を開いているように見せかけて理解を求める割に、結局心を開けなかったんだ。だから、ダメになった。

理由はそれだけじゃないかもしれないが、それは大きな原因の一つだったんだろう。

……俺は中野さくらに心を開いているんだろうか。

それとも、ただ単に風邪をひいて弱っているだけだろうか。だとしても、これは自分自身、いい傾向だと思った方がよさそうだ。

「あれ、起きちゃった?」

体を起こすと、台所から中野さくらが顔を出した。

「雑炊作ったけど、食べる?」

「……うん、ありがとう」
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