女子力高めなはずなのに
中野さくらは鍋を火にかけて温め直すと、器に雑炊をよそってくれた。

湯気の上がった雑炊はかなりうまそうだった。正直食欲はなかったが、見たら食べたいという気持ちになった。

さすが、女子力とやらを見た目と料理と言っただけのことはある。

頬杖をついて俺が食べる様子をじっと見る中野さくら。

……可愛い。

風邪をひいた舌では、あまり味を感じることはできなかったが、それでもわずかに感じた雑炊の味は出汁が効いててうまかった。

「うん、うまいよ」

そう言うと、中野さくらは嬉しそうににっこり笑った。

俺はその笑顔だけで十分だよ。

他には何もいらない。

「俺に惚れたからこんなことしてくれんの?」

冗談交じりで聞いてみたら、中野さくらは勢いよく返事をしてきた。

「バ、バッカじゃないの!勘違いしないでよ!色白やせ眼鏡のくせに」

「じゃあ、昨日俺を呼んだせいだと思って気にしてる?」

「それは……うん、ごめん」

うつむく中野さくら。やっぱり気にしていたのか。
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