女子力高めなはずなのに
「そういえば井川さん、なんでこんな寒い所で煙草吸ってるの?喫煙室に行けばいいじゃん」

「うん?んー喫煙室はね、営業さんたちがたむろしてるから嫌なの」

「なんで?」

「営業さんたちにとっては、業務課長なんてお呼びじゃないからね」

「ふーん……。そういうもの?」

「そ!そういうもの」

確かに、営業の人たちはいつも上からって感じで、槇村さんみたいな紳士的な態度の人はあんまりいない。

みんないつも忙しくて、正直余裕がないんだと思う。

そうだとしたって、喫煙室で一緒になるのも避けるなんて、井川さん営業課とうまくいっていないのかな?

井川さん、意外と孤独に仕事をしている?


「そんな顔するなよ」

ん?なんだろう、と思って首を傾げた。

「どんな顔?」

「心配そうな顔」

やだ……、私って顔に出やすいのかな?

「そんな顔、してないもん」

「そう?じゃあ、気のせいか……」

あれれ?

いつもの強気はどうした?

井川さん、本当に落ち込んでるの?

ガランッ!

ハッとした時には既に井川さんが勝手にボタンを押して、取り出し口にブラックの缶コーヒーが落ちてきていた。

「アーッ!アンタ何勝手に押してんのよ!」

「なかなかボタン押さないから、俺を心配して奢ってくれるのかと思って」

「そんなわけないでしょ!もうっ!」

あははっと楽しそうに笑う井川さん。

まあ、ちょっと笑顔になったから許してやるか。
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