女子力高めなはずなのに
電車に乗っている間も、電車から降りて歩いている間も、ほとんど会話はなかった。

会話はなかったけど、その間もずっと手は繋いだまま。

嬉しくて辛くて複雑で、引き寄せられるような距離の近さに何度もドキッとした。

「井川さん、私の家まで来たら遠回りだから、ここからは一人で大丈夫だよ」

そう言ったのに、「別にいいんだ」と言って井川さんは私の家の最寄り駅で一緒に降りた。

どうしてそこまでするの?

あんまり優しくされるとむしろ辛くなる。

うつむいて黙ったまま手を引かれて歩いた。

そうして家の前に着くと井川さんは立ち止まって、繋いだ私の手を両手で持った。

「今日はもう出かけるなよ」

そんな念を押すように言うなんて、どうして私が一人で飲みに行くなんて思い込んでるんだろう。

「出かけないよ……」

「ならいいけど」

それに、もう家に着いたから、手を離しちゃうんだよね?

離さないでほしいけど、仕方がない。

……?

まだ離さない?

井川さんはじっと繋いだ手を見ている。

どうしたの?

繋いだ手から私に視線を向けた。

「……じゃあ」

つぶやくようにそう言って、井川さんはやっと手をゆっくりと離した。

予想通り、離れた途端冷たい空気が手に触れて一気に寂しくなる。
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