女子力高めなはずなのに
「俺たち恋人同士に見えるかな?」

急に振り返って井川さんがそんなことを言い出したから、驚いて見上げた。

私はそんなの、そう見えたらいいに決まってるけど。

今度はまたどういうつもりで言ってるの?

全然わかんない。

それなのに、本当の恋人だったらって思っただけで、胸がキュンとしてしまう。

「そんな風に見えちゃうかもよ」

「今日は『バッカじゃないの!』とか言わないのな?」

「……バカ」

……なーんだ、ツッコミ入れてほしかっただけか。

そういうことなら、そんな思わせぶりなこと言わないでよ。

井川さんは……、私のこと、恋人に見えてほしい?

そんなわけないよね。

本当は好きな人とこうしたいよね?


……。

井川さんの好きな人って、どんな人なんだろう。

本当に人妻なのかな?

なんとかならないのかな?

井川さんの想い、叶えてあげられないの?

何か協力することなんてできる?


……でも。

井川さんがその人を嬉しそうに抱き締める姿なんて、考えたくもない。

そんなの想像するだけで辛くて胸が痛くなる。

やっぱり、……協力なんてできないや。

私、性格悪いな。

井川さんが片想いなことを利用して、代わりになってることを利用して、こんな風に手を繋いで温かい手を独占していることを秘かに喜んでるなんて。
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